AIコンサルや支援会社3社から提案書をもらった。どれにも「業務が大きく変わります」と書いてあり、事例もそれらしい。金額は倍以上違うのに、何が違うのかが分からない。AIの導入を検討し始めた会社が、最初にぶつかりやすい状況です。
先に立場をお伝えしておきます。私たちも外部のAI担当を月額でシェアする形で支援をしている側です。だからこそ、自分たちに都合のよい基準ではなく、どの支援会社を検討するときにも使える確認の仕方をまとめます。
確認する視点は5つあります。相手の種類、提案書、注意したいサイン、契約書、見積です。 最後に、面談でそのまま使える質問を付けています。
中小企業庁の「中小企業白書」でも、デジタル化に取り組む中小企業が広がる一方で、社内の専門人材の不足が課題として繰り返し示されています。社内に判断できる人がいないから外部に頼むのに、その外部を選ぶ判断にも専門知識が要る。契約してから「思っていたものと違った」となりやすいのは、このためです。
視点1 「AIコンサル」の中身は4種類ある
最初に確認したいのは、相手がどの種類の支援会社かです。同じ「AIコンサル」を名乗っていても、売っているものがまったく違います。種類が違う会社の提案書を横に並べて比べても、判断がつかないのは当然です。
| 種類 | 主に提供するもの | 向いている場面 | 注意したい点 |
|---|---|---|---|
| 戦略コンサル型 | 調査、方針づくり、ロードマップ | 全社で何に取り組むかを決めたい | 報告書で終わり、実行は自社任せになりやすい |
| ツールベンダー型 | 自社製品の導入と設定 | 解きたい業務と使う道具が決まっている | 自社製品が前提なので、合わない業務にも当てはめがち |
| 受託開発型 | 専用システムの開発 | 既製ツールでは対応できない業務がある | 開発後の保守費用と、作ったものの持ち主を確認する |
| 伴走・顧問型 | 優先順位づけ、試験導入、定着の支援 | 何から始めるかがまだ決まっていない | 支援の範囲が曖昧だと「相談しただけ」で終わる |
どれが良い・悪いではなく、 自社の状態に合っているかどうかで選びます。解きたい業務が決まっているならツールベンダー型で足りますし、何も決まっていないのに受託開発型に頼むと、要件が固まらないまま費用だけが膨らみます。
提案を受けたら、まず「この会社は4つのうちどれか」を書き出してください。それだけで、比べる軸がそろいます。
視点2 提案書で最初に見るべき3か所
提案書は、事例や成果の数字に目が行きがちです。ただ、判断に効くのは別の場所です。
1. 課題の欄が、自社の言葉で書かれているか。 ヒアリングを丁寧にした会社の提案書には、「経理担当者が月末に3日かけて請求書を作っている」のように、自社の業務がそのまま書かれています。逆に「業務効率化」「DX推進」のような一般的な言葉しかない場合、他社に出した提案書とほぼ同じ中身である可能性があります。
2. 成果の測り方が書いてあるか。 「効率化します」だけでは、終わったあとに成果があったのかどうかを誰も判断できません。どの業務の、何を、いつ、どう測るのか。着手前の状態をどう記録するのか。ここが空欄なら、契約前に一緒に決めてもらうよう頼んでください。
3. 自社がやることが書いてあるか。 AIの導入は、外部だけでは完結しません。業務の情報を出す人、試しに使う人、確認する人が社内に必要です。提案書に「御社にお願いすること」が1行もない場合、その負担は契約後に突然やってきます。
視点3 注意したいサイン
契約前の段階で気づけるものを挙げます。1つ当てはまったからといって悪い会社とは限りませんが、複数当てはまるなら立ち止まってください。
- 成果の数字が先に出てくる。「工数80%削減」のような数字が、自社の業務を聞く前から提示される。その数字は他社の、条件の違う事例です
- できないことを聞いても答えがない。「AIで何でもできます」と言う相手は、自社の業務のどこでAIが失敗するかを考えていません
- ツールの話から始まる。 業務の話より先に製品名や機能の説明が続く場合、提案の出発点が自社ではなく相手の商品です
- 長期契約が前提になっている。 最初から1年契約で、途中解約の条件が厳しい。合わなかったときの逃げ道がありません
- 実際の担当者が出てこない。 商談に来るのは営業担当だけで、支援する人と話せない
- 入力した情報の扱いが曖昧。「セキュリティは大丈夫です」で終わり、どのツールのどの設定で、入力内容が学習に使われない状態にするのかを説明できない
最後の点は特に重要です。業務の情報を外部に出す以上、取り扱いの線引きは契約前に決めておく必要があります。考え方はAI業務利用のセキュリティと情報管理の基本で整理しています。
視点4 契約書で必ず確認する6項目
選定と同じくらい大事なのが契約書の中身です。口頭で聞いた話が契約書に書かれていないことは珍しくありません。
- 支援の範囲: 何が月額に含まれ、何が別料金か。打ち合わせの回数、資料作成、ツールの設定作業、社内向けの研修はどちらに入るか
- 期間と解約の条件: 最低契約期間、途中解約の可否、解約の申し出はいつまでに必要か
- 成果物とデータの持ち主: 作ってもらった手順書、プロンプト、設定、集めたデータは契約終了後も自社に残るか。支援会社を替えるときに困らないか
- 秘密保持と入力データの扱い: 秘密保持契約の範囲、入力した情報をAIの学習に使わない設定で運用するか、支援会社が自社の情報を他の案件に使わないか
- 追加費用が発生する条件: ツールの利用料は誰が払うか、範囲外の依頼をしたときの単価はいくらか
- 担当者と連絡の手段: 実際に支援する人は誰か、担当が替わるときはどうなるか、連絡の手段と返答までの目安
相手を疑うための確認というより、同じ前提で仕事を始めるための確認です。 まともな支援会社であれば、こうした質問を嫌がりません。むしろ嫌がられたら、それ自体が判断材料になります。
視点5 見積の比べ方
金額が倍違うのに、中身の違いが分からない。その場合は総額で比べず、費用が何に使われているかに分けてください。
- 人の時間:打ち合わせ、調査、設計、研修にかかる工数
- 道具の費用:AIツールや関連サービスの利用料
- 作るものの費用:専用の仕組みを開発する場合の開発費と、その後の保守費
安い見積は、たいてい人の時間が少ないか、道具の費用が別になっています。高い見積は、開発が含まれているか、関与の深さが違います。分けて並べると、そもそも同じものを比べていなかったと分かることがあります。
月額の支援であれば、判断は金額そのものより「どの業務の時間がどれだけ変われば元が取れるか」で考えるのが実務的です。考え方は費用対効果とROIの考え方にまとめています。
面談で聞いておきたい質問
最後に、面談の場でそのまま使える質問を挙げます。答えの内容と同じくらい、即答できるかどうかを見てください。
- 私たちの業務のうち、AIに向かないのはどこだと思いますか
- 最初の3か月で何をして、何ができていれば成功と判断しますか
- 私たちの側で用意する人と時間は、どれくらいですか
- 入力した情報は、どのツールのどの設定で扱いますか
- 契約が終わったとき、私たちの手元には何が残りますか
- 実際に担当してくださるのはどなたですか。一度お話しできますか
- 範囲を狭めて、1つの業務から短期間で始めることはできますか
1つ目と7つ目への答え方で、相手の姿勢はかなり分かります。向かない業務をすぐに挙げられる相手、小さく始める提案を受け入れる相手は、自社の都合より顧客の状態を見ています。
迷ったら範囲を狭めて始める
それでも決めきれない場合は、契約の単位を小さくしてください。対象を1つの業務に絞り、期間を数か月に区切り、途中で見直せる形にする。こうすれば、合わなかったときの損失は限られますし、相手の進め方を実際に見てから次を決められます。
支援会社の選び方に唯一の正解はありません。ただ、判断を誤る原因はほとんど同じです。相手の種類を確かめない、成果の測り方を決めない、契約書を読まない。 この3つを契約前に済ませておけば、「思っていたものと違った」はかなり防げます。
なお、専任の人材を採用するか外部に頼むかでまだ迷っている段階なら、AI人材は採用か外注かから読むと判断の順番が整理できます。外部に頼む形のうち、AI担当を月額でシェアする方式の中身は外部AI担当(CAIO)とは?業務内容と選び方で説明しています。