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AI推進担当は誰に任せるか?中小企業の体制づくり

2026年9月9日 ・ 著者:ショー(外部AI担当/CAIO)
AI推進担当は誰に任せるか?中小企業の体制づくり

「AI活用を進めるなら推進担当を置くべき」とはよく言われます。ただ、実際に社内を見渡して、その人が思い浮かばない。手が空いている人はいないし、詳しい人もいない。結局「誰か気づいた人がやる」という状態のまま、契約したツールだけが残っている——中小企業でよく起きている止まり方です。

中小企業庁の「中小企業白書」でも、人手不足を経営課題に挙げる中小企業が高い水準で続いていることが示されています。専任を置けないのは能力や意欲の問題ではなく、そもそも人が余っていないという構造の問題です。だから議論すべきは「専任を置けるか」ではなく、兼務で回る形をどう設計するかになります。

この記事では、推進担当が実際にやること、誰に任せるべきか、任命と同時に何を渡す必要があるかを整理します。

推進担当がやることは、実際には4つ

役割を広く定義すると誰も引き受けられません。実務上、必要なのは次の4つに絞れます。

  1. 困りごとを受け取る窓口になる。 「これAIでできない?」という相談が最初に集まる場所を1つ作ります。窓口がないと、相談は誰にも届かないまま消えます。
  2. 業務を「AIに渡せる作業」に翻訳する。 「問い合わせ対応に時間がかかる」を、「よくある質問への回答の下書きを作る」まで分解します。ここが推進担当の一番の仕事です。
  3. 入れてよい情報の線引きを決める。 どのツールに何を入力してよいか。ここが曖昧だと、慎重な社員ほど使いません。
  4. やってみた結果を社内に流す。 うまくいった使い方も、うまくいかなかった使い方も共有します。失敗の共有のほうが効きます。

技術的な知識は、この4つのどれにも必要ありません。 プログラミングができる人を探して見つからないのは、探しているものが違うからです。必要なのは自社の業務を知っていて、現場と話せることです。

誰に任せるか——向く人、向かない人

「向いている人」を条件で整理すると、社内の顔が浮かびやすくなります。

見るところ向いている向いていない
業務の把握複数部署の仕事の流れを説明できる自分の担当範囲しか見えていない
現場との距離現場から相談される立場にある現場から「上の人」と見られている
経営層との距離決裁者に直接話せる何段階も上げないと通らない
新しい道具への態度面白がって触るが、鵜呑みにしない完璧に理解してから使いたい/逆に無条件に信じる
手持ちの余裕週2〜3時間を確保できるすでに残業が常態化している
立場「決められない」ときに聞ける相手がいる一人で全部背負う構造になっている

最後の2行が実は決定的です。 業務を一番よく知っているベテランは、たいてい一番忙しい人です。その人に兼務させると、AI推進が「後回しにされる仕事」の一番下に沈みます。適性よりも、時間が確保できるかで決まります。

逆に「完璧に理解してから使いたい」タイプは、検証で止まって前に進みません。AIは触りながら分かる道具なので、多少雑に試せる人のほうが向いています。

任命と同時に渡すもの

役割だけ渡して「あとは頼む」にすると、必ず止まります。同時に3つ渡してください。

時間。 「通常業務のうえでやってくれ」は、やらないでくれと同義です。週2時間でも、業務時間として確保すると宣言してください。何を減らすかまで一緒に決めるのが理想です。

決めていい範囲。 「月◯円までのツールは自分で試してよい」「この部署の業務なら声をかけてよい」という線を先に引きます。毎回稟議が必要な状態では、試す回数が確保できません。

やめる判断の権利。 これが一番忘れられます。「1か月試して現場が使わなければ、その業務は諦めてよい」と先に言っておくと、担当者は動けます。撤退が許されていないと、人は最初から動きません。

そして経営者側がやるべきことが1つあります。「これは会社として進める」と社内に言うことです。担当者が個人的に旗を振っている状態だと、現場は「付き合わなくていいこと」と判断します。この一言があるかどうかで、協力の得られ方が変わります。

最初の90日の進め方

最初から全社を巻き込むと負担で潰れます。順序はこうです。

期間やることやらないこと
1〜30日業務の棚卸し。誰の時間がどこに消えているかを聞き取るツールを選ぶこと
31〜60日業務を1つだけ選び、2〜3人で試す。前後の所要時間を計る対象を増やすこと
61〜90日手順とルールを文書にして、同じ業務の他の人に渡す別の業務に広げること

1〜30日でツールを選ばないことが肝心です。 ツールから入ると、その道具でできることに業務を合わせにいってしまいます。棚卸しを先にやると、「そもそもこの作業は無くせる」という発見も出ます。

31〜60日の「前後の所要時間を計る」も飛ばさないでください。着手前に計っていないと、後から効果を説明できません。ストップウォッチで正確に測る必要はなく、「だいたい2時間かかっていた」という担当者の申告で十分です。

動かなくなったとき、どこを見るか

3か月経って何も変わっていない場合、原因はほぼ次の3つのどれかです。

相談が担当者に届いていない。 窓口を作ったつもりで、社内に周知されていないパターンです。この場合は担当者の努力不足ではありません。朝礼やチャットで「AI関連はこの人に」と繰り返し言う仕組みが足りていません。

担当者の時間が確保されていない。 「今月は忙しくて手をつけられなかった」が2か月続いたら、任命の設計が失敗しています。担当者を替えるのではなく、減らす業務を決め直してください。

選んだ業務が難しすぎた。 最初に選ぶ業務が、判断を多く含むものだと精度が出ません。「毎月必ず発生して、間違えても取り返しがつく事務作業」に対象を絞り直します。

この3つのどれでもない場合は、AIが向いていない業務を選んでいる可能性があります。 その業務は諦めて、別の業務に移ってください。

兼務で足りる条件と、足りない条件

最後に、社内に置くだけで足りるかどうかの線引きです。

兼務で足りるのは、社内に「複数部署の業務を説明できて、決裁者に直接話せて、週2〜3時間を確保できる人」が実在する場合です。この3つが揃っていれば、外部に頼む必要はありません。試して、直して、広げるのは自社でできます。

足りないのは、次のいずれかに当てはまる場合です。

このうち最後の2つは、判断の材料が足りないだけなので、外部に一度整理を手伝ってもらうと動き出します。私たちのように外部のAI担当を月額でシェアする形は、社内に窓口役は置けるが、判断の材料が足りないという会社に向いています。逆に、社内に窓口役すら置けないなら、外部を入れても受け取る人がいません。

つまり、外部に頼むかどうかの分かれ目は予算ではありません。社内に「相談を受け取る人」が1人いるかどうかです。ここが空いている限り、誰を入れても定着しません。まず埋めるべきはその1人です。

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